題名 ・・・・・ 『 高く 遠く Ⅱ 』
寸法 ・・・・・ 高さ65.5×幅45×奥行き33(Cm)
材質 ・・・・・ ウルグアイ産黒御影石、鉄台座
(制作年・・・・・ 2009.7)
作品制作の意図(思い)
『人間一人ひとりが、それぞれ一回きりの「生」を生きる
ということをテーマに制作いたしました。
誰しもが、たった一回きりの寿命を生ききる
生きなければならない、ということを
緊張感ある造形で表現したいと思いました。
この作品で、私自身がかたちのモチーフとしたものは
石を割るときに用いる「矢」(楔・くさび)でした。
その矢・楔のかたちの中に、見て下さる方が
意識のうえで上るための階段を
いくつかの方向性をもって造形いたしました。
この矢という道具は
一つの石の塊を真っ二つに割るのに用います。
そこに一発、強い打撃の力を加えれば
石は一瞬にして割れてしまう・・・。
そんな大変化の可能性をはらんで
矢が石の上に屹立するような
緊張感の上に成り立つ「生」を
私は表現したいと思いました。
それは、私が人の一生というものは
大なり小なり、いつも決定、決断の上に
成り立っていると考えているからです。
昨今、生きていくことがとても厳しく
困難な情勢だと語られて久しくなります。
この作品を制作する頃、私自身も実際にそう感じ
ているところがありました。
けれども、私自身
ネガティブな思いを抱えながら作り始めたこの作品は
制作が進むにつれて、大変化の可能性を秘めて
自分の人生を生ききるという
ポジティブなイメージに変化していきました。
この作品は
南米ウルグアイ産の黒御影石を用いています。
原石の外側には、採石したときそのままの
土がついています。
その自然石の肌を、あえて取り去ったり
磨いたりするくことなく、
自然の風景のように見立てました。
その大地(台座)に立つ矢(楔・くさび)には
意識のうえで上る階段を造形しています。
階段は作品背後にも、側面にも造形してあり
制作が進むにつれて、のぼりくだり、行きつ戻りつの
いろいろな方向性を持った、建築のような
イメージになっていきました。
制作の進行とともに、自分の思いが
ネガティブからポジティブへと
昇華していったとことは
矢・楔形の上辺をも、階段状に造形したこと
かたちがより「高く 遠く」へ続くように
造形したことに表れたと感じています。
私は、どんなに困難と思われる状況の中でも
人間に生まれることができたからには
心・精神は常に自由に「高く 遠く」を目指して、
一回きりの「生」を生きたていきたい・・・
と願っています。
そんな祈りを込めて
この作品を見て下さる方にも
一回きりの人生を謳歌する「元気」を届けられたら・・・
という思いで制作いたしました。
この作品を見て下さる方が
意識の上で、この階段を上りながら
どんな人生を生きていきたいか
ご自身と対話する時間が提供できたなら
私はとても嬉しく思います。』